Wilcoに出会ったのは、2002年の「リバーダンス」のレコーディングの時だった。代々木のレコーディングスタジオに入っててエンジニアの人が、新譜を何枚か買ってきてた中に彼ら4枚目アルバムの「ヤンキーフォックストロット」があったのを覚えている。この当時ショップで面出しされていたし、オルタナカントリーなんて言葉を聞いたのもこの頃だった。聴いた感想はあまりピンときていなかった。ただ変わった音楽だなと、これがオルタナカントリーというのかと。それから2年ぐらいしてはじが、iTunesかなにかのサンプルでWilcoって入っているよと教えてくれて、聴いた時に「すげーかっこいい!」と。それは2枚目のアルバムの「Monday」という曲で、ストレートな、少しルーズなアメリカンロックで、僕の理想とする、ロックンロールだった。なんだか前に聴いたWilcoの印象と全然違ってて、なんなんだこのバンドはと探り始め、今ではこんなにはまってしまったという訳なんです。幾多の困難にあっても、自分の音楽の信念を曲げず貫く姿勢、サウンドに多くの人が惹かれこのバンドは徐々に大きくなっていきました。音楽も聴く時期、タイミングで感じ方は様々だから、あの頃「Wilco」というバンドに出会えたことは僕の人生の中でもかなり大きな出来事だった。
そしてその彼ら主催のフェス「SOLID SOUND」に行く日を迎えた。
起きてからシャワーを浴びたけど、ぬるいお湯で結局すべて洗い終わったあたりでお湯になるという…まさにこれぞNO! NEWYORK !少しお腹が空いていたので、ホテル近くのコンビニのような売店で、グレープフルーツのジュースとバナナブレッドを買った。ちょうど3ドル。紙袋に入れられなんだか外国っぽい。たかだかパン買うことだけなのに、ニューヨークでなんの問題もなくさらりとやりこなした自分が少し嬉しくて、いい朝を迎えた気分だった。10時にチェックアウトして、いよいよフェスへ向かうバスの集合場所へ向かう。フェスはニューヨークから車で4時間ほど離れたマサチューセッツ州のノースアダムスという場所で行われ、その街の現代美術館MASS MOCAというところが会場。ニューヨークからの直行バスをフェスで出していたので、ライブチケットと共に早々と昨年から予約していました。集合場所はタイムズスクエアから少し入ったところで、iPhoneを頼りに早めに行きました。そしてその待ち合わせの場所で日本人のカップルと出会った。カイさんとキョウコさん。カイさんは英語が喋れていたので他に並んでいたアメリカ人たちと話していた。意外にも早く日本人に会い少しホッとしました。
そしてだいぶ人が集まり、バスのリーダー、ローレンがチェックをしてバスに乗り込んだ。Wilcoももうだいぶベテランバンドなのでお客さんの年齢層は若い人もいるけど、まあ高め。バスに乗り込んだらまた別の日本人女性がいて、隣になった。コミチさんという神戸の方で、かなり洋楽詳しい人だった。バスは長いこと停車できないので時間厳守だとメールでも書いてあったが、遅れてくる人たちがたくさんいて、結局1時間ぐらい出発が遅れた…しかも遅れてきた連中は悪びれる様子もなくハ~イなんておどけて乗り込んできていた。時間に厳しい日本では考えられない...車内ではコミチさんと色々な音楽の話ができて楽しくすごせました。そして会場付近まで来たところでドライバーが道を間違え、狭い道路へ入ったりバックしたりと、なにやってんだか…
ようやく18時頃に会場MASS MOCAへ到着。メールで送られてきたチケットを見せ、無事会場へ。リストバンドがフェスらしい。ようやく来た!SOLID SOUND! 入り口ではブラスバンド隊が演奏しており、まさにお祭り気分!フェス自体は始まっていたけれど、Wilcoの出番はまだなのでまずはキャンプサイトへ行き、テントを張ってから戻って来ることにした。コミチさん、カイさんとキョウコさん達とは、それぞれ宿泊先が違っていたので、皆さんと別れ、僕は歩いて10分ぐらいのキャンプサイトへ歩いて向かった。
キャンプサイトは「SOLID GROUND」という会場から一番近いキャンプサイトで、ここも早々と予約をした場所だった。この予約のことは以前ブログでも書いたけど、会場のMASS MOCAが電話のみで予約を受け付けており、僕はタジタジの英語で電話し何回も掛け直した。そして日本から出発する少し前にも、再度確認の電話をしたので完全におかしな、英語がまったくダメな日本人が、また掛けてきたぞと覚えられている様子だった。そしてキャンプサイトに到着。受付のところにいた女の子にチェックインをお願いし、名前を告げると「あなたがサクマなの!?』と驚かれ、やっぱり覚えられていた...(笑)。笑われちゃったけど、英語がダメなのをわかってくれているから、親切に教えてくれた。その女の子はここのSOLID GROUNDのチーフで名前はアリスンという陽気な女性だ。
家族で大きなテントを張れるように、一つのテントスペースは広く、持ち込んだ一人用のテントでは十分過ぎるほどの広さだった。このキャンプサイトは普段はサッカー場なので芝がフカフカで気持ち良かった。テントは溝渕ケンイチロウ氏から借りたもの。一人テントをやるなんて思い返してみれば22歳の時に一人で北海道へバイクで行った時以来、20年ぶりぐらいになる。あの時も友人にテント借りた気がする。持つべきものは友よ~なんて都合のいいこと言ってないで僕もそろそろ買わないとな。あの時に行った北海道が自分にとってとても大きな影響を与えたように、今回の旅が自分にとってまた大きなモノになればいいなと思った。
テント設置後、軽装で再度MASS MOCAへ。シャトルバスが30分おきに走っていたが、このぐらいは歩く。西日を浴びるノースアダムス、山に囲まれた盆地で綺麗な街だ。このSOLID SOUNDを街全体で歓迎しており、一つのフェスティバルとして、様々ところにお祝いメッセージや表示などがされている。気持ち高ぶって会場へ入った。このMASS MOCAは古い建物を活かした作りで、こじんまりとはしているけど、アイデア豊富な面白い場所で、すぐにいいイベントだって思えた。あちこち見たいところばかりで、キョロキョロしてしまう。メインステージのJOE’S FIELDではすでにリアルエステートが演奏していた。人もいっぱい入ってて、みんなビール片手に楽しんでいる。夕暮れと相まって心地のいい気分だった。日が傾くと気温が下がり、だいぶ冷えてきた。
そしてWilcoの出番になった。さすがの盛り上がり。とうとうこの日を迎えたよ!当たり前だけど周りは外人さんばかり、でも全然寂しいなんて思わなかったし、好きなものがあるってすごいエネルギーになるなと。この日Wilcoはアコースティックセットでの演奏。正直いつもの大きな音の方が好みだけど、それは明日ということで。3日間全てを違った見せ方にしている、さすが!ステージのすぐ脇に線路があって、そこを演奏中に長い列車が動き出した!まるで演出なのかと思ったぐらいバッチリなタイミングで興奮しました。結局一曲終わるぐらい列車は続いてて、これぞアメリカって感じがしましたね。だいぶ気温が下がって、僕はたまらず物販コーナーで長袖シャツを購入。すぐに着込んだ。そしてフードコーナーでホッドッグを食べた。ここのは抜群に美味かった~
12時頃にライブが終了、キャンプサイトへまた歩いて帰った。寒暖の差で芝は雨が降ったように濡れていた。テントの中はだいぶ冷え込み、シュラフを持ってこなかったことを後悔した。ケンさんにテントを借りた時に、きっと暑いだろうからシュラフはいいやなんて言ったんです。ケンさんは、じゃあ寒くなった時ようにとシュラフカバーを貸してくれた。ありったけの服を着込んでシュラフカバーに包まっているが、それでも寒い…
山へ行く者として、この軽率だった判断がほんと悔やまれる。最終的にザックに足を突っ込んで夜を明かした。